当院では、自費診療による受託臨床検査として160遺伝子を調べる「PleSSision検査」を2017(平成29)年11月から導入しています(検査費用;約59万円)。通常、がんの遺伝子検査は、患者さんのがん組織からDNAを抽出して遺伝子配列を解析しますが、PleSSision検査ではさらに血液から採取した患者さんの「がん」ではない細胞の遺伝子も同時に検査しています。それによって、より正確な遺伝子異常を検出し、また、そのがんが遺伝性か否かを判断することが可能です。

解析結果は、主治医に加えて、病理医、薬物療法専門医、検査技師、バイオインフォマティシャンなどゲノム医療の専門家からなるカンファレンス「Cancer Genomic Board」によって議論され、ドライバー遺伝子のように発がんへの関与が知られており、治療標的としての介入(Action)が期待される「Actionable変異」、その中で実際に投薬可能な薬剤が存在する遺伝子変異「Druggable変異」を同定しています。

また、複数の診療科のがん治療専門医から得られた、これまでの治療に対する反応や副作用、年齢、背景、治験情報等を加味した上で最終的な推奨治療を決定し、患者さんに遺伝子解析報告書をお返ししています。

これまでに合計で450名を超える患者さんに対してPleSSision検査が行われてきました(前身となった北海道大学病院でのクラーク検査の実績を含む)が、その結果は当初の期待を大きく超えるものでした。

Actionable遺伝子を検出した割合は90%以上、米国FDA承認治療薬または治験薬の情報に関与するDruggable遺伝子を検出した割合は59%です。また、検出された遺伝子異常に基づく個別化治療を行った患者さんは13%で、奏効率(がんが一時的にでも縮小した症例)は38%、病勢制御率(がんが縮小またはがんの増大が止まった症例)は73%と報告されています(北海道大学病院+北海道がんセンターでの実績)。

一人一人のがん患者さんに最も適した治療薬の情報を提供する「がん遺伝子外来」を開設しております。遺伝子パネル検査「PleSSision 検査」を実施しています。

2018 年2 月、慶應義塾大学病院は、厚生労働省から、「がんゲノム医療中核病院」に認定されました。腫瘍センターでは、2017 年11 月より、一人一人のがん患者さんに最も適した治療薬の情報を提供するために「がん遺伝子外来」を開設し、受託解析にて、複数のがん遺伝子を調べる遺伝子パネル検査「PleSSision 検査」を導入致しました。さらに一人でも多くのがん患者様に遺伝子解析に基づく最適な治療方針について情報を提供できるように、臨床研究として「PleSSision-Rapid」を2018 年10 月より開始しております。

1.概要

「がん遺伝子外来」では、ゲノム医療ユニットの臨床検査技師が、まず「遺伝子パネル検査」の目的や意義について説明します。患者さんが検査の実施に同意された場合には、提出していただく病理組織検体の手続きと採血を行います。

その遺伝子検査システムは、西原医師(慶應義塾大学医学部特任教授)が北海道大学病院にて開発したクラーク検査に基づきながら、検査センターにて受託解析として実施するものであり、プレシジョン検査(PleSSision; Pathologists edited, Mitsubishi Space Software supervised clinical sequence system for personalized medicine)と名付けられた国内検査です。

腫瘍センターでは、得られた遺伝子パネル検査の結果は、がん治療専門医、病理医、遺伝子診断医などが集まるCancer Genomic Board(カンファレンス)に提示され、推奨される治療薬について検討します。その検討結果は、検査同意から約4〜6 週間後の外来にて患者さんにご説明します。慶應義塾大学病院では、複数の診療科の医師がチーム医療体制を構築することで、患者さんに医療サービスを提供することを目指しています。

PleSSision(プレシジョン)検査の内容について

網羅的ながん遺伝子解析とは?

現在、「がん」は発症臓器(たとえば肺、肝臓など)、及び組織型(たとえば腺がん、扁平上皮がんなど)に基づいて分類され、治療法の選択が行われています。しかし、近年の研究により、「がん」は様々な遺伝子の異常が積み重なることで発症し、仮に発症臓器が同じでも、その遺伝子の異常は個々の患者さんごとに異なることが判ってきました。

さらに、その遺伝子の異常の中には、がん細胞の生存に重要な特定の遺伝子が存在することが知られるようになり、既に特定の遺伝子の異常を標的とした治療薬(分子標的治療薬)が日常臨床で使われています。

しかし、現在、日常診療の中で行われている遺伝子検査は、分子標的治療薬の標的となる遺伝子異常を1つずつ、もしくは数個ずつしか調べることが出来ません。そこで、網羅的がん遺伝子解析では、患者さんのがんの診断や治療に役立つ情報を得るために、一度に複数の遺伝子変化を調べる最新の解析技術を用いて検査を行います。

こうした検査の結果で推奨される薬剤には、保険診療が適用される一般の抗がん剤や分子標的治療薬に加えて、現在臨床研究中(治験中)の薬剤や保険適応外の薬剤が含まれます。

対象となる患者さん

「がん遺伝子外来」にて申し込みができる網羅的がん遺伝子解析;プレシジョン検査は、がん組織から抽出した核酸(DNA)と、血液の正常細胞(白血球)から抽出した核酸(DNA)を比較することで、がん細胞に特異的な遺伝子の異常を見つけるものです。

従って、対象となる患者さんは、

  • 病理組織学的検査によって悪性腫瘍(がん)と診断された患者さん
  • 現在、悪性腫瘍(がん)の治療が行われている患者さん
    です。がんに罹患しているかどうかを調べる(スクリーニング、検診)ためにこの検査を受けることはできません。

また、当検査が自費診療であり、他科の外来を保険下で受診された患者さん、当院に入院中の患者さんは、保険診療との混合診療となる為、入院中にこの検査を受けることはできません。(退院後に改めて「がん遺伝子外来」を受診する場合は、検査可能です。)

検査を受けることで役立つこと

  • 患者さんのがん細胞に見られる遺伝子の異常が明らかとなり、がんの個性が判る可能性があります。
  • 治療効果が期待できる国内で承認済みの治療薬の情報が得られる可能性があります。ただし、実際には、その治療薬が入手できない、あるいは投薬出来ない可能性があります。
  • 治療効果が期待できる国内で臨床試験(治験等)中の治療薬の情報が得られる可能性があります。ただし、患者さんの状態や合併症によって、その治験を受けられない可能性があります。
  • 治療効果が期待できる国内未承認、海外で承認済みあるいは臨床試験(治験等)中の治療薬の情報が得られる可能性があります。ただし、一般的にそのような薬剤は入手が困難な場合が多く、治療に結び付かない場合が少なくありません。

検査の種類と費用について

  • 網羅的がん遺伝子検査;プレシジョン検査は、保険診療の対象外の自費診療となるため、患者さんご自身に費用の全額をご負担いただきます。検査申し込み時の初診料(6,090円)、検査料(577,800円)、結果説明時の再診料(1,580 円)の合計約59万円の費用が掛かります。
  • 本検査によって得られた情報をもとに、「がん」に対する治療が行われる場合、その治療にかかる医療費は、検査のための費用とは別です。また、この治療が保険診療の対象外となり、高額の医療費を負担していただく必要がある場合もあります。詳細は、「がん遺伝子外来」の担当医にお尋ねください。
  • 検査の説明を受けた結果、検査を行わない場合(保留を含む)には、セカンドオピニオン外来の受診料のみ(税込32,400 円)となります。
  • 検査を申し込む場合には、当日に費用の全額のお支払(現金、またはクレジットカード可)が必要となります。クレジットカード払いの場合には、PIN(暗証番号)が必要となります

*注1使用する組織検体の状態によっては、検査が実施出来ない場合があります。その場合でも、使用する組織から遺伝子を抽出し、その遺伝子の状態を確認して検査実施の可否を判断するための品質検査を外部検査機関に委託するために、その費用が発生します。検査の品質確認は2 段階で行われ、最初の段階(病理品質検査)で解析中止となった場合には、先に支払って頂いた検査料から解析費用を差し引いた差額を返金します。

*注2その他、複数の免責事項があります。詳しくは、担当医にお尋ねください

本検査を受ける際の注意点【重要】

<重要1>本検査には、次のような限界があります。この点をご了解いただいたうえ、本検査を申し込んでください。

  1. 本検査を利用しても、あなたのがんの診断や治療に有用な情報が何も得られない可能性があります。
  2. 本検査は、治療効果が期待できる治療薬の情報を提供しますが、その治療薬の治療効果を保証するものではありません。
  3. 本検査で判明した「がん」に関係する遺伝子の異常に対して効果が期待される薬剤が見つかったとしても、あなたのがんに対して承認されていない(※)場合、薬剤の入手が出来ない、あるいは投与ができない可能性があります。また、治療費は自己負担となります。※「保険診療で使えない薬剤」または「他のがんや病気では保険診療で使えるが、あなたのがんでは使えない薬剤」を指します。
  4. 本検査から得られた遺伝子解析データの解釈(有効性が期待できる薬剤情報等)は、あくまで解析を行った時点での遺伝子情報や治療情報のデータベースに基づく慶應義塾大学病院における判断であり、同じデータであっても異なる医療機関や、後日再解析した場合には、異なる解釈となる可能性があります。
  5. がん遺伝子検査は、検査の性質上、使用された病理組織の採取部位、時期によって解析結果が異なることが知られています。従って、今回の検査で得られた結果が、将来別な病理組織を使って検査した場合に、異なる解析結果となることがあります。
  6. がん遺伝子検査での解析結果によっては、今治療中の薬剤があなたのからだには合う薬となる場合もあります。

<重要2>
がん遺伝子外来は、がんの治療・診断に関するセカンドオピニオン外来とは異なります。診断内容や治療方針について、専門医の意見や判断を希望される場合には、別途、セカンドオピニオン外来にお申し込みください。

検査の流れ

外来受診から、結果説明までの流れを、以下の図でご確認ください。

外来の予約について

「がん遺伝子外来」は、月曜・木曜の午後(1 人1 枠、1 枠30 分、1 日新患最大3枠)、週に6枠で行います。受診には全て、現在がん診療中の医師・医療機関からの紹介および予約が必要です。主治医の先生にご相談の上、外来予約センターを介して予約してください。医師・医療機関からの紹介がない場合の予約は受け付けしておりません。

なお、外来受診にあたっては、現在までのがん診療に関する「診療情報提供書」(現在診療中の病院が作成・発行)をご準備の上、可能な限り外来受診日より前にFAX または郵送にて提出願います。また、検査を行うための「病理組織標本」を、手術・生検を行った病院から郵送、または持参していただく必要があります。病理組織検体の作成依頼・取り扱いについては、予約完了後に慶應義塾大学病院の担当者と紹介元病院の間で連絡を取って対応しますので、詳細は主治医にご確認ください。

検査後の治療について

  • 現在、保険診療で認められている標準治療が行われている患者さんは、その標準治療が優先され、遺伝子検査の結果に基づく治療は全ての標準治療が終了した後の選択肢として考慮されます。
  • 本検査の結果、現在行われている治験に登録が可能と考えられた場合、その治験を実施している病院をご紹介します。
  • 遺伝子検査の結果、効果が期待される薬剤の情報が得られた場合には、「適応外申請を行って自費診療で治療を行う」、あるいはその薬剤による治療が先進医療としてすでに承認されており、他施設において既に実施されている場合には、その先進医療実施病院を紹介して、自費診療と保険診療を並行して治療を行う可能性が考えられます。これらの場合、治療費が高額となります。
  • 本遺伝子検査を実施しても、治療薬の選定に有用な情報が何も得られない可能性もあります。
  • 遺伝子検査の結果に基づいて治療を行っても、十分な治療効果が得られない可能性もあります。
  • がん遺伝子検査は、あくまで主治医の判断に必要な情報を提供するものであって、がん遺伝子解析の結果が、主治医の判断よりも優先されることはありません。

“遺伝するがん”(遺伝性腫瘍症候群)に関する結果の開示について

プレシジョン検査では、血液由来の正常遺伝子を同時に検査することにより、遺伝性腫瘍の発症に関連した遺伝子の変化(生殖細胞系列バリアント)などが見つかる可能性があります。このように検査の本来の検査目的以外で発見される所見を、「二次的所見」といいます。

検査の過程であなたやあなたの血縁者の健康を守る上で、がん関連疾患について重要と思われる結果が判明した場合で、かつそれに有効な対処法があると考えられる場合には、その病気の専門家、担当医などと慎重に検討した上で、主治医や遺伝カウンセリングを通してご説明させていただく場合があります。遺伝カウンセリングの外来は保険適用外です。結果の開示を希望しない方にはその旨お伝えください。

医療機関の方へ

貴院の担当者(地域医療連携室等)からFAX・電話にて慶應義塾大学病院・外来予約センター(直通FAX :03-5843-6167、直通電話:03-3353-1257)へお申込み下さい。(電話対応時間:8 時30分〜16 時、平日及び第2・4・5土曜)

  • 外来受診の際、現在までのがん診療に関する「診療情報提供書」が必須となりますので、ご準備の上、可能な限り外来受診日より前にFAXまたは郵送にてお送りください。
  • 既往病理診断報告書については、検査用検体の選定において重要な情報となりますので、可能な範囲でご提供をお願い致します。検査所見、CT、MRI 等の画像データの提出については、必須ではありませんが、結果の解釈や推奨治療法の選定において参考になる場合がありますので、可能であればご提供をお願い致します。
  • 核酸抽出検査を行うための手術・生検時のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)から作成された未染色標本が必要となりますので、利用できる病理組織の有無を確認の上、予約してください。利用できる病理検体がない場合は先に検査の可否についてご相談下さい。尚、予約確定後、使用する病理検体の選定についてのご案内を、こちらの担当者よりご連絡させて頂きますので、診療情報提供書内に連絡先を明記願います。

より詳細な検査に関する資料をご希望の場合には、腫瘍センター・ゲノム医療ユニットまでご連絡下さい。

「がん遺伝子外来」に関するお問い合わせ先

*検査内容に関する問い合わせ
慶應義塾大学医学部・腫瘍センター・ゲノム医療ユニット
〒160-8582 東京都新宿区信濃町35 総合医科学研究棟3-S5
TEL: 03-5315-4374
対応可能時間:月〜木曜日11:00〜16:00

* 外来予約に関する問い合わせ
慶應義塾大学病院・外来予約センター
〒160-8582 東京都新宿区信濃町 35
TEL: 03-3353-1257 FAX: 03-5843-6167